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「誰も守ってくれない」 [cinema]

1/31(土)にハシゴしたもう1本、これです。
君塚良一監督の作品はこれまで「MAKOTO」も「容疑者 室井慎次」もひとまず全部、スクリーンで追いかけてきています。
その前に「踊る大捜査線」シリーズの脚本があって、そこで名前は記憶していたので、こういう人気TVシリーズを手がけてきた脚本の方が監督になるっていうのは、あんまりないタイプだしどうなんだろう・・・?と思いながら(とはいえ、ものすごく懐疑的だったわけではないんですが)、極めて正攻法で作品にしてるっていう印象があって、けっこうはまっていました。「MAKOTO」は一応、原作のある形ですが、やはり脚本を手がけて撮るということがすんなり判る、映像表現として極端な刺激は最初から必要としていない作品だなぁと、狙いすぎたりしない映像を求めている監督なんだなぁと思っていました。とはいえ、セミ・ドキュメンタリー撮影の手法で表現されている緊張感たっぷりの映像は実に見応えがあります。

冒頭、殺人事件の容疑者宅に警察の捜査が踏み込んでいく、その描写に現場の音声はオフになって清らかなコーラスの音楽が乗る、観ていて胸がしめつけられるようなあの効果はふと、「踊る」TVシリーズの最終回、やはり冒頭の切ないシーンを思い出しました。あのシーンでは既に起こったものを読み上げていく第三者的な語りがありましたが、今回は物語としてリアルタイムで追いかけていく映像のみです。そこで登場する、それぞれの職務を全うする様々な立場の人たちは、当事者は不在のこの家庭にまさに土足で暴力的に踏み込んできて、自らの仕事を淡々と片付けていく・・・・そのことが、単純に理不尽に思える描写に惹きこまれました。
“加害者の家族は、その責任として同等の罰を受けるべきだ”と、報道の自由を主張する立場の男が、自らの信念や立脚点に動かされ自分がプロフェッショナルとしてとるべきある種当然の行動をとります(この男を演じていた佐々木藏之助氏の存在感がまた、単に悪意や野次馬根性みたいなものだけで動いている訳じゃない複雑さが窺えて、そういう矛盾がある本来多層的なリアルな人物造形が面白かったです)。そのことが結果的に当人も思いもよらないほどの余波になっていく想像など、出来るはずもありません。パンフレットで監督がインタビューに答えていますが、「正義」を主張することが及ぼす果てにあるものが本当に正しいことにつながっているんだろうかと、明確なメッセージとしてではないけど、そこに疑問を抱いているべきじゃないかと示している気がします(「正義はそれぞれが胸に秘めておくべきものだと、僕はいまでも信じています」という発言がパンフの中にある言葉です)。
佐藤浩市さん演じる刑事の引きずってきた過去は当然消し去ることは出来ず、でもこの物語によってそれをきちんとした痛みとして引き受けていく展開は、それが救済の形になどなっていなくても伝わるし、これで十分です。
あのペンションの二人も、表面上見えている受け答え以上のやりきれない気持ちが実際には確実にあるし、最後にかけた言葉はシンプルだけど、やっぱり十分な意味のある一言だし。
このごろ随分増えてきた、'泣けるドラマ’じゃない内容に、観ていて様々な感情がわきあがってきました。
これは、ほんと観ておけて、出会えてよかった作品でした。
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コメント 4

non_0101

こんにちは。
私も劇場で観てきて良かったです~
誰もが追い詰められているような社会の構図も感じられて
ちょっと怖かったですけど、
佐藤浩市さんの演じた主人公の語る言葉が
本当に胸に響いてくる作品でした☆
by non_0101 (2009-03-20 12:45) 

cs

non_0101 さん、nice&コメント&TB、どうもありがとうございます。
劇場でご覧になって、やっぱりよかったですよね、これは。
松田龍平くんがパンフレット掲載のインタビューで発言していたんですが、現実に身近に起こりうる可能性があるし、でも日常では垣間見ることはない世界を描いてて、たまたま最近のニュースで改めてその怖さも感じたりすることもあったりして、胸に迫る内容だったです。
佐藤浩市さん演じる勝浦刑事のあのたどり着く先に、希望があるのが観ていて救いだっただけじゃなく、主人公の彼にとってもきっとそうだと思えるのがよかったです。
by cs (2009-03-20 14:47) 

naonao

先日は訪問いただいてありがとうございました。
映画は単に娯楽でそのとき楽しく観られたらそれでいいという映画と、全く知らない世界へと誘ってもらい、重い気分になるけれどもいろいろ学ぶことが多い映画と大きく二つありますが、これは本当に後者の映画でしたね。こんな世界があるのだと初めて知る人が多いと思うし、問題を投げかけ考えさせられる映画でしたね。
by naonao (2009-03-25 22:18) 

cs

naonaoさん、こちらへもniceとコメント、どうもありがとうございました。
実際、映画という中でも、ほんとにジャンルというかタイプの違うものがかなりありますね。
もちろん、娯楽としての完成度というのも重要な作品がありますし、芸術性を味わうのもあったり、文学的な雰囲気があるものもあったり、考えるきっかけになるものがあったり、いろいろですね。
提示すべき答えみたいなのは結局はないのかもしれない、でも答えを探さなきゃ、と考え始める後押しをしてくれる作品になってたのがこれだったと思いました。
重たい部分があるけど、なるべくいろんな人に観て欲しいと思うのって、こういう作品なんですよね。
by cs (2009-03-26 22:32) 

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