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「夕凪の街 桜の国」 [cinema]

夕凪の街 桜の国 [DVD]

夕凪の街 桜の国 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 東北新社
  • メディア: DVD

雑誌「ぴあ」で記事を読んでからこの作品のことをきちんと知ったので、まず原作があることを知らずに居ましたが、公開が始まって以来どこかでずっと気になっていた作品です。
当初、勤務先から程近い八千代緑ヶ丘の映画館で上映してるのをチェックしていたので、そこで鑑賞する予定でいたんですが観に出かけようと思ったら上映時間が朝の1回のみに変更になっていました。前日から楽しみに思っていながらも先週日曜、早起きも出来ず無念でした(夜更かししすぎです)・・・・が、気を取り直し、ネットで検索。蘇我にあるXYZシネマズでも上映があると判明しました。予定を切り替え、こちらへ向かいます(ここでも1回上映だったんですが夕方からだったんで助かりました)。

原作と同様、「夕凪の街」というエピソードの部分でひとつ、それから「桜の国」でもうひとつという構成です。
実際には原作では「桜の国(一)」、「桜の国(二)」となっていて、映画ではこの(二)の内容を中心に展開して、その一部として(一)が内包されるように構成しなおしてありました。

☆夕凪の街 について
舞台は広島、昭和33年という時代背景で若干原作とずらしてあるのは佐々部清監督が生まれた年であるという理由以外に、昨年かなり多くの人が観ている「ALWAYS 三丁目の夕日」と同じ年代として設定することで比較できる効果もあってとのこと。どちらにも共通する項目として力道山とか、時代の輪郭をくっきりと描く名前が登場しています。そして、ピカからは13年が経過しているその町で、この物語は単なるフィクションではない間違いなくごく普通に見られたであろう風景が描かれています。ここでは、幼い妹を背に爆心地から生き延びて自らを責めながら暮らす女性、皆実の視点が中心です。麻生久美子さん演じる皆実の“生きていて申し訳ない”という思いは、舞台から映画化された「父と暮らせば」の中で描かれていたものと同じです。この作品ではなぜそういう発想に至るのかを皆実の見た風景がよくわかるように丁寧に見せてくれています。何気ない日常であるはずの銭湯での光景も、そこに陰を落とすものが何であるか、くっきりと見えてきました。目の前に見えているものを、なかったことにして無感覚でやり過ごす方法って、現代のいじめの温床を育てる環境と全く一緒に思えて、それがいかに身近かを考えると恐ろしくもあります。
皆実が口にする「誰かに死ねばいいと思われとったん」という台詞はずっしりと響きます。
正義の為の戦争で見ず知らずの誰かを殺すことに、本当に正当性があるのか、殺人を実行する兵士が結局戦地とは程遠い確実に安全な場所に居る誰かの指示によって動いている現実って何なのか。自分が受けた傷は倍返しして結果的に、どんどん自然を汚していく国家って、ほんとに先進国なのかと、つい考えてしまいます。
このエピソードが未完の形で結ばれていて、続く「桜の国」でも結論はそのまま導かないことで、それが普遍にもつながっていく見せ方として印象に残りました。
そこから、少し時間が経ってこの記事を書くに当たり、自分は勝手に映画を観たすぐ後とは違う方向で現在の姿を思ってしまいました。

☆桜の国 について
こちらは現在、平成19年の都内という設定です。
不審な行動に思える父を追って、自分も知らなかった家族のつながりにたどり着く七波の目線で物語が進行していきます。こちらは、その中のエピソードとして東京での出来事を描いた「桜の国(二)」の部分が登場しますが、基本的にはロードームービーの体裁になっています。道中を共にする七波の久々に再会した小学校時代の同級生・東子によって、「夕凪の街」に比べかなりカラフルで弾んだ雰囲気があって、いかにも現在の戦争との無縁なムードが分かります。演じる田中麗奈(七波役)、中越典子(東子役)の明るいけど、ただ浮かれていない独特の匙加減の存在感が魅力的でした。
そしてこの途中に、「夕凪の街」部分では全部描かれていなかったエピソードの続きが登場します。この辺りの構成はよく練られていて、自然とその昭和の街と平成の世の中がひとつの線で結ばれて見えました。
市民は何のために犠牲を払うのか、それが国家の利益だとして、その利益って誰のためのものなのか、納得できるものは見えません。現在でも国家の意思はそういう風に動いているとしか感じられないってことは、いくら経済として発展を遂げても精神性は見事に未発達のまま時間だけが経っている気がします。選挙に参加しても国政に参加している実感を持てないのは当たり前のことなんでしょうか。

などと、つい暗い気持ちになる考えだけが巡りますが、この作品に出会えて本当によかったと思っています。
できることならもう一度、スクリーンで味わいたいです。

夕凪の街桜の国

夕凪の街桜の国

  • 作者: こうの 史代
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 単行本


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コメント 2

minku~♪

麻生久美子さんは、今まで私の観た作品のなかで、一番印象的でした。
「誰かに死ねばいいと思われとったん」という台詞はずっしりと来ましたよね。。。
あんな怖い原爆自体よりも、「誰かに死ねばいい」と思われたこと自体の恐ろしさをしっかりと伝えてくれました。

「生きてることが申し訳ない」とか「幸せになる資格がない」と思わせていたことが、とても悲しかったです。
by minku~♪ (2007-09-01 20:45) 

cs

minku~♪さん、早速のこちらへのコメント、どうもありがとうございます。
大体、ほんと好みの傾向がお互い近いから、感想もきっといちばん共感してもらえる部分が多いんじゃないかといつも思ってます。
麻生久美子さんは同郷なのでただ単に外見的にとにかくキレイだとかじゃなくてカンゾー先生で映画に出始めた頃からずっと応援している女優さんです。それをminkuさんにこうして改めて認めてもらえる作品が公開されて何より嬉しいです。あのはかなげな雰囲気が佐々部監督のねらい通りで素敵でしたね。原子力爆弾という途方もない何かより、それを操作しているヒトがおそらく普通に考えていたであろう発想とかを思い巡らすって、ほんとにおそろしいことに思えます。踏みとどまれる決断も出来るのがヒトだと、楽観的に思いたいですが。
「幸せになる資格はない。お前はこちら側の人間だ」という声は今でも聞こえている人がまだまだ沢山居るんじゃないでしょうか。過去を改めて知ることで七波も他人ではなくなった気はするし、だからこそ後に旭(父)が七波にかけてあげた言葉に確かな説得力があってすごく沁みました。この結び方、すごく素敵で好きです。これでもう一度観たくなってる気もしますね。
by cs (2007-09-02 00:30) 

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